真実はいつも一つ。


小学校の同級生が駅のホームで話し掛けてきた。



「私のことわかる?あの時はありがとう、助かったよ」



…何を言ってるんだ?
彼女の名前と顔はわかる。
だがお礼を言われることなんてした覚えがない。
何のことか問うてみた。
彼女が語る真相はこうだ。



彼女が高校生の時、チャリに乗っていて車と軽い衝突事故を起こしてしまった。
すると、偶然通りかかった誰かが倒れた自転車を起こして手助けしてくれた。
そしてその誰かが俺だった。




しかし、ここに記憶の食い違いが生じている。
事故に遭ったのが同級生とはわからなかったけど、確かに俺はその現場に居た。
だが実際に俺がした行動と言えば、だだだ大丈夫ですか?!と声を掛けてオロオロしまくってただけだ。
彼女は記憶を混同している。
なので俺はこう言ったのです。



「いやー、いいっていいって!」




fin.