安心な僕らは旅に出ようぜ。

卒業した。
学位授与式も飲み会も友達との半永久の別れもすべて呆気なかった。
正直、大学ってのが俺にとって何だったのかよくわからない。
これからはタフに生きなければならないと帰りの駅のホームで思った。
やれやれだぜ。


次の日、友人Yから着信があった。



「よお。昨日は楽しかったな。ところで、お前がこの前に言ってた豆まきの話だけど…そう、お前は鬼が部屋の隅にうずくまっているって言ってたよな。俺、今日部屋を掃除してたらお前が言ってたその説も理にかなっていると思ったんだよ。埃とか影とか、邪なものは隅っこに溜まる、って意味が少しだけわかった気がしたんだ」


「お前、わざわざそれを言うために電話してきたのかよ」


「そう、それだけだよ。ハハ」



俺は笑いながら鼻を掻いた。
その一言に四年間が詰まっているような気がした。




「それだけだよ」




fin.