田園。

昨晩は腹が膨れすぎて、夜はもんどり打っておった。
うどん過多だ。






いよいよ今日は88番大窪寺を打つ日。
しかし焦ることはない。17km程の山道を走ればいいだけのこと。
時間はたっぷりあるのです。







しかし2週間かあ…見ると聞くとじゃ大違いさ。
短かったなあ。



旅は憂いもの辛いものと言うけど、
この旅の最中は昔のことを思い出すことが多かった。
昔のことはすべて楽しい。
とあるスタンド曰く、
「生きるということはきっと思い出をつくることなのだ」



八十八カ所巡ったからなんだと言う人もいるだろう。
僕もそう思う。別に信心深いわけじゃあなし。



しかし、とあるスタンドは言う。
「いい思い出が人間のエネルギーであり、それが細胞に勇気を与えてくれることは間違いない」



僕もそう思う。
人生は何もないより、何かあったほうが絶対にいい。









ああ、夏に来たらまたこの景色も違って見えるのかな。
蝉が鳴いてて汗を拭いつつ走る…そういうのもいいかもしれない。
もっと色んな季節に色んな場所に行きたい。






そうこうしているうちに着いてしまった。





88番!大窪寺
やったあ!





いつもより丁寧にお参りをする。
僕以外に参拝者はいない。



だって雨だもの。



そして、何か工事をやってるもの。
現場の怒声で厳かな雰囲気台無しだもの。



兎にも角にも、ついに結願である。
ちょっと泣きそう。
色んな人に優しくされて、ようやく辿り着いたゴール。
地図と自転車だけじゃきっと成立しなかった旅だ。
人との触れ合いは楽しいね、もっと思いやり合えたらいいね。




さて、だがまだ終わらない。
1番の霊山寺にお礼参りに戻ることにする。
大窪寺のある山を下ると、その先は霊山寺の付近へ繋がっている。
どこまでもゲーム的というかRPG的というか…。







ただいま!
1番!霊山寺





終わった…。
ついに終わったのだ。


お参りをして、徳島駅へ向かおうと自転車に乗った。
そこで携帯電話が鳴った。
出てみると、昨日泊まった民宿のおばあちゃんからだった。



「にいちゃん今どこね、もう終わったんかね?最後まで気をつけてね、今度は彼女と来んさい!」



「はい、ありがとうございます。うどん美味しかったです、また行きますよ。さようなら」




僕は電話を切った。


そういえば白衣を着たままだったことに気づき、脱いでリュックにしまった。


雨はいつの間にか止んでいた。




fin.